枕飯(まくらめし)
枕飯(まくらめし)は、亡くなった人に対して最初に供える食事のことを指します。主に仏教における葬儀や法事の際に行われる儀式の一部で、故人が旅立つ前に必要な食物を供養として捧げることが目的です。枕飯は、亡くなった人の枕元に供えることからその名がつけられます。
枕飯は、通常、亡くなった直後に供えられ、特に重要なのは「初七日」の前夜に行われることが多いです。この時、故人が亡くなった後の初めての食事として供えられるため、葬儀や法事の準備が進む前に故人の安らかな旅立ちを願って行われます。また、枕飯は「魂の食事」としての意味も込められており、食物は故人のために清潔で整えられたものが選ばれます。
枕飯に使われる食材には、故人が生前に好んで食べていたものや、無病息災を願う意味を込めた食材が選ばれることがあります。ご飯やおかず、果物やお茶など、シンプルでありながらも、故人を尊重する気持ちを込めた食事が供えられます。供えるものは宗派や地域によって異なり、特に決まった形式はないため、その家庭や地域の習慣に従って準備されることが多いです。
枕飯は、単に食事を供えるという行為ではなく、遺族が亡くなった人を丁寧に送り出し、故人の冥福を祈る儀式として重要な意味を持っています。また、遺族にとっても、故人との最後のつながりを感じることができる大切な瞬間であり、心の整理をつけるための儀式ともいえます。
現代では、枕飯を行う家庭は少なくなっていますが、伝統的な習慣として行うことで、仏教の教えを尊重し、故人に敬意を表する重要な儀式となります。