末期の水(まつごのみず)
末期の水(まっきのみず)は、死期が近い人に与えられる水のことを指します。仏教や日本の伝統的な習慣では、死に臨んでいる人にこの水を飲ませることで、浄化を助け、穏やかな死を迎えさせるとされています。末期の水は、故人が生前に欠かさずに飲んでいたものや、清らかな水であることが望まれ、医療行為ではなく、むしろ精神的・宗教的な意味合いが強い儀式です。
この水を与えることには、死者が苦しみを減らし、来世への旅路を穏やかに進むことができるようにという願いが込められています。末期の水は、必ずしも口から飲ませることを意味するわけではなく、浄水や清めの儀式として、身体にかける場合もあります。また、末期の水は家族や親しい人々が故人に最後の水分を与える行為でもあり、愛情と祈りを込めた大切な行為として行われます。
この儀式は、特に仏教徒の家庭で見られ、死後の浄土を目指すとともに、故人の苦しみを軽減するための儀礼として行われます。末期の水を与えることで、遺族は故人を丁寧に送り出すことができるとされ、また、死に向かう過程を受け入れ、心の整理をつける一助となります。
現代においては、病院や介護施設で行われることは少なくなりましたが、家庭での最期を迎える際には、伝統的な儀式として今も行われることがあります。末期の水は、単に身体の清めではなく、心の整理と平穏をもたらす大切な儀式であるといえます。