奉書紙(ほうしょし)
奉書紙(ほうしょがみ)は、日本の伝統的な和紙の一種で、古くから公式な書状や儀礼に用いられてきた高級紙です。主に楮(こうぞ)の繊維を使用して手漉きで作られ、丈夫で耐久性があり、滑らかで美しい白色を持つことが特徴です。その名前の「奉書」は、かつて幕府や朝廷が公式文書や大切な記録を奉書紙に書き上げていたことに由来し、格式の高い紙とされています。
奉書紙は日本の書道や芸術分野でも愛用され、掛け軸や襖、屏風の裏打ち、書画の支持体としても広く利用されています。また、儀礼的な用途としては、香典袋や不祝儀袋の包み紙、結納の際の包紙など、厳粛な場面での包装にも使われます。その紙質の美しさと重厚感は、重要な書面にふさわしい格式を与え、相手に対する敬意を示すための表現とされています。
現在でも奉書紙は、高級和紙として手漉き職人により伝統的な技術で製造され続けており、日本の文化や美意識が息づいています。多様な用途に対応するため、厚さや仕上がりに変化を持たせたさまざまな奉書紙が作られ、書道愛好家や伝統文化の愛好者の間で愛用されています。奉書紙の存在は、和紙の魅力とその歴史的価値を今に伝える重要な文化財として、日本の伝統を支える役割を果たし続けています。